古伝空手について
古伝空手とは、琉球の士族階級の間で秘密裏に修練・伝承されてきた武術空手のことを言います。言い換えれば、徒手空拳術たる空手と、武器術たる琉球古武術の双方に共通する古来伝承の術理を踏まえて、古武術的に修練する空手の意です。
そもそも道具を使うゆえに万物の霊長たる人間の戦いに(どんな戦いであれ)武器の使用は不可欠です。日本武術のいわゆる武芸十八般を引くまでもなく、(スポーツの場合はともあれ)いやしくも実戦においては、人間同士がが素手で戦うということは有り得ません。
巷間、為にする(ある目的を達しようとする下心があってことを行う)言動として「空手は素手で戦うもの」なる概念が横行しておりますが、これが誤りであることは論を俟ちません。
沖縄においては、遠く三山割拠の戦国時代よりすでに、棍(棒)やティンベー(楯)・ローチン(鉾)の使用があったことは史書に明らかです。逆に言えば、そこには徒手空拳術(空手)も存在していたということであります。琉球武術の源流たる中国武術の例を引くまでもなく、そもそも徒手空拳術(空手)の技法と武器術の技法とは両面一体の関係にあるゆえに、武器術で使える術理は徒手空拳術(空手)にも使え、その逆もあるからです。
ともあれ、徒手空拳術たる空手の視点のみで、武術としての空手を解釈しようとしても自ずから無理があることは自明の理であります。つまり、古伝空手とは、琉球武術たる両者共通の原理を根拠として、いわゆる沖縄の一般的な伝承型(41型)に内包されている空手の術理を追究し、それを(スポーツ空手としてではなく)武術空手として稽古するものであります。その術理が古来伝承されてきたものゆえに古伝空手と称するのであります。
琉球古武術について
琉球古武術で使用する武器には、棒(六尺棒・三尺棒・エイク・九尺棒)、釵、トンファー、ヌンチャク、鎌、鉄甲、ティンベー、スルジンの八種があります。この言わば定型的な八種の武器についてそれぞれ使い方や基本組手を学びつつ、技の習熟度に応じて伝えられている各型(42種)の分解組手などを稽古することになります。
もとより、それらの用法に精通することは一朝一夕に成るものではありませんが、それはさておき、その修得それ自体は、あくまでも一つのプロセスであり、琉球古武術の真の狙いとするところではありません。
琉球古武術の究極の目的は、定型的な八種の武器の用法に精通していることを基礎として、いざという場合、その周辺にある不定型な物、すなわち、どのような形の物であれ、もしくはその長短・大小・硬軟のいかんを問わず、臨機応変・状況即応して、それらを武器として活用し適切に使いこなすことにあります。
そこに必要な要素は、まさに兵法的な思考力であり創造力であります。その感覚を養うために平素から定型的な長短・大小・硬軟各種各様の武器の使用法を稽古し、その扱いに慣れるという訳であります。
因みに、知性あるゆえに万物の霊長たる人間の戦いは、そこに有形・無形の要素を総合的に活用して勝ちを求める「兵法」という知恵が加わることによって、単なる力の争いの場から、知略(知恵)の争いの場へ変質するのであります。
その意味で、いざと言う場合、その周辺にあるあらゆる物を自在に利用し、使いこなすことを真の目的とする琉球古武術は、まさに無手空手たる徒手術(空手)と相俟って、無から有を生み出す無形の技量たる「兵法」を志向するものと言えます。
すなわち、古伝空手・琉球古武術を稽古するということは、性弱にしてともすれば怠惰に傾き勝ちな自己の心身を練磨することはもとより、人生における真の意味での護身術たる兵法的思考力を修得する具体的かつ有効適切な方法であると言えます。
松濤館流空手について
松濤館流空手は、沖縄の空手を本土に初めて紹介し、その普及に大きな貢献をした功績により近代空手の父とも称される船越義趁を開祖としております。日本の空手四大流派の一つであり、世界で最も多くの人々に学ばれている流派と謂われております。
その特長は、前屈立や後屈立ち、騎馬立といった広い歩幅の姿勢を多用して、進退を大きく行い、腰を低く落とした姿勢から伸び伸びとした大きな突きや蹴りを用いるところにあります。
言い換えれば、立ち方や技の所作は大まかで簡単であり、言わば徒手体操的な動きに似ているため、初心者がとりあえずの空手の技を身につける方法としては適切なスタイルであります。当道場では、小中学生に対してはいわゆるスポーツ空手として、学生や社会人に対しては古伝空手に移行するための基礎稽古としてこれを指導しております。
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