15、〈第三篇 謀攻〉に曰う「兵力比互角の戦法」について
孫子十三篇の首(かしら)の部分を構成する〈第三篇 謀攻〉は、その前半で「戦わずして勝つ」、その後半で「戦いて勝つ」を論じております。とりわけ後半では、具体的な数値を示してまで「兵力比に応ずる戦いの理」を説いております。則ち『十なれば、則ち之を囲み、五なれば、則ち之を攻め、倍すれば、則ち之を分かち、敵すれば、則ち能く之と戦い、少なければ、則ち能く之を逃れ、若かざれば、則ち能く之を避く。』であります。
が、しかし、まさにその核心部分たる「兵力比互角の戦法」を論ずる『敵すれば、則ち能く之と戦い』については、これまでいわゆる現行孫子の立場から極めて不自然・不明瞭な解釈がなされておりました。例えば、「兵力が等しければ努力して戦い」あるいは「互角の兵力なら勇戦する」のごとしであります。一体、何を言いたいのか、その言葉の中味たる具体的説明が空っぽゆえに、まさに意味不明であると言わざるを得ません。
そのゆえにまた、右の言と密接に関連する「倍すれば、則ち之を分かち」も全く見当違いの解釈とならざるを得ず、おのずから「勝ちを知る五法」の一たる「衆寡の用を知る者は勝つ」の「衆寡」についても具体的な内容は何ら示されておらず、ただ漠然と「衆寡」の言葉だけが、右の「努力して戦う」、あるいは「勇戦」するの言と同様、空しく空回りしているという体たらくであります。
そもそも兵法は、「勝ちは大兵にあり」、「大は小より格段に強い」、「優勝劣敗・弱肉強食」の言に代表されるがごとく、彼我の力関係の在り様を追究するものゆえに、何はさておき、まずはその基準となるべき「兵力比互角」とは何かについて論ぜられる必要があることは論を俟ちません。
が、しかし、これまでのいわゆる現行孫子的な解釈においては、その核心部分たる「兵力比互角の戦法」とは何かについての解説が一言半句も出てこないのですから、実に摩訶不思議と言わざるを得ず、何かが、どこかがおかしいと考えるのは蓋(けだ)し当然のことであります。況んや、ことが古今の兵書の白眉たる孫子においてをや、であります。
実は、この孫子最大の謎を明快に解き明かす核心部分が〈第四篇 形〉でありますが、そのための前段階として〈第三篇 謀攻〉・後半に曰う「兵力比に応ずる戦いの理」、則ち『十なれば、即ち之を囲み、五なれば、則ち之を攻め、倍すれば、則ち之を分かち、敵すれば、則ち能く之と戦い、少なければ、則ち能く之を逃れ、若かざれば、則ち能く之を避く。』の真意を理解しておく必要があります。まさにこの部分を解説するものが、今回、出版された電子書籍(アマゾン書店)・【孫子正解】シリーズ第五回 用兵総論〈第三篇 謀攻〉であります。御一読賜れば幸甚です。
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孫子塾では、孫子に興味と関心があり、孫子を体系的・本格的に、かつ気軽に学べる場を求めておられる方々のために、以下の講座を用意しております。
※併設 拓心観道場「古伝空手・琉球古武術」のご案内
孫子を学ぶのになぜ古伝空手・琉球古武術なのか、と不思議に思われるかも知れません。だが、実は、極めて密接な関係にあります。例えば、彼のクラウゼヴィッツは、「マクロの現象たる戦争を、言わば個人の決闘的なミクロの戦いへ置き換えることのできる大局的観察能力・簡潔な思考方法こそが、用兵の核心をなすものである」と論じています。則ち、いわゆる剣術の大なるものが戦争であり、勝つための言わば道具たる剣術・戦争を用いる方法が兵法であるということです。
とりわけ、スポーツの場合は、まずルールがあり、それをジャッジする審判がいます。つまり、スポーツの本質は、娯楽・見世物(ショー)ですから、おのずから力比べのための条件を同じくし、その上で勝負を争うという形になります。つまりは力比べが主であり、詭道はあくまでも従となります。そうしなければ娯楽・見世物にならず興行が成り立たないからです。
これに対して、武術の場合は、ルールもなければ審判もいない、しかも二つとない自己の命を懸けての真剣勝負であり、ルールなき騙し合いというのがその本質であります。つまるところ、手段は選ばない、どんな手を使ってでも「勝つ」ことが第一義となります。おのずから相手と正面切っての力比べは禁じ手となり、必ず、まず詭道、則ち武略・計略・調略をもってすることが常道となります(まさにそのゆえに孫子が強調するがごとく情報収集が必須の課題となるのです)。
つまり孫子を学ぶには武術を学ぶに如(し)くはなしであり、かつ古伝空手・琉球古武術は、そもそも孫子兵法に由来する中国武術を源流とするものゆえに、孫子や脳力開発をリアルかつコンパクトに学ぶには最適の方法なのです。
古伝空手・琉球古武術は、日本で一般的な、いわゆる力比べ的なスポーツ空手とは似て非なる琉球古伝の真正の「武術」ゆえに誰でも年齢の如何(いかん)を問わず始めることができ、しかも生涯追及できる真なる優れものであります。興味のある方は下記の弊サイトをご覧ください。
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