16、「現行孫子」と「竹簡孫子」の根本的な違いについて
すでに〈前篇 謀攻〉で明らかにしましたように、孫子は、強者の戦法として『十なれば、則ち之を囲み、五なれば、則ち之を攻め、倍すれば、則ち之を分かち』と論じております。
言い換えれば、(兵力の質・量が同等であるとする前提において)攻めてよい、あるいは攻撃してもよいとする、言わば万全確実な兵力比は、我が敵の四倍以上(因みに、コープマンの戦略モデル式によれば三倍の兵力で対戦すると必勝になり、四倍で戦うと圧勝になるという)であることを意味し、取りも直さずこのことは、防禦という戦闘形式は、それ自体としては攻撃という戦闘形式よりも強力・有利であることを証明するものであります。
つまり攻撃は、攻略という目的を達成するために、進んで様々な戦争手段・方策を使用しなければならないから、防禦よりも遥(はる)かに多大な戦力を必要とし、消耗するものなのです。
このことはまた、論理必然的に、兵力比互角の場合における攻撃と防禦両戦闘形式の原理的・本質的関係を示唆するものでもあります。則ち、兵力比互角の場合における攻撃と防禦の両戦闘形式を比較すると、右の理由から明らかに防禦の方が強力・有利な戦闘形式であり、攻撃の方が脆弱・不利な戦闘形式であると結論づけられるのです。
このゆえに竹簡孫子は、兵力比互角の場合における防禦と攻撃の原理的・本質的関係として『守るは則ち余り有り(防禦の方が戦力に余力を生ずる戦闘形式の意)』、『攻むるは則ち足らず(攻撃の方が戦力に不足を生ずる余力のない戦闘形式の意)』と曰うのであります。
因みに、現行孫子ではこの箇所を「守は則ち足らざればなり、攻は則ち余りあればなり」と作り、まさに正反対・真逆となっています。両者のこの基本的かつ決定的な違いは、孫子十三篇の理論体系と全体構造を正確にキチンと読み解く上で極めて重要なヒントを提示するものです。
まさにこの、言わば孫子最大の謎を明快に解き明かすものが、このたび出版されたアマゾンの電子書籍:【孫子正解】第六回・兵力比互角の戦法〈第四篇 形〉であります。興味と関心のある方は御一読賜れば幸甚です。
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孫子を学ぶのになぜ古伝空手・琉球古武術なのか、と不思議に思われるかも知れません。だが、実は、極めて密接な関係にあります。例えば、彼のクラウゼヴィッツは、「マクロの現象たる戦争を、言わば個人の決闘的なミクロの戦いへ置き換えることのできる大局的観察能力・簡潔な思考方法こそが、用兵の核心をなすものである」と論じています。則ち、いわゆる剣術の大なるものが戦争であり、勝つための言わば道具たる剣術・戦争を用いる方法が兵法であるということです。
とりわけ、スポーツの場合は、まずルールがあり、それをジャッジする審判がいます。つまり、スポーツの本質は、娯楽・見世物(ショー)ですから、おのずから力比べのための条件を同じくし、その上で勝負を争うという形になります。つまりは力比べが主であり、詭道はあくまでも従となります。そうしなければ娯楽・見世物にならず興行が成り立たないからです。
これに対して、武術の場合は、ルールもなければ審判もいない、しかも二つとない自己の命を懸けての真剣勝負であり、ルールなき騙し合いというのがその本質であります。つまるところ、手段は選ばない、どんな手を使ってでも「勝つ」ことが第一義となります。おのずから相手と正面切っての力比べは禁じ手となり、必ず、まず詭道、則ち武略・計略・調略をもってすることが常道となります(まさにそのゆえに孫子が強調するがごとく情報収集が必須の課題となるのです)。
つまり孫子を学ぶには武術を学ぶに如(し)くはなしであり、かつ古伝空手・琉球古武術は、そもそも孫子兵法に由来する中国武術を源流とするものゆえに、孫子や脳力開発をリアルかつコンパクトに学ぶには最適の方法なのです。
古伝空手・琉球古武術は、日本で一般的な、いわゆる力比べ的なスポーツ空手とは似て非なる琉球古伝の真正の「武術」ゆえに誰でも年齢の如何(いかん)を問わず始めることができ、しかも生涯追及できる真なる優れものであります。興味のある方は下記の弊サイトをご覧ください。
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